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第一回:サーフィン業界の現状と最新の技術トレンド プリント メール
サーフィン文化発祥の地LAで次世代サーフボード開発を!

柳澤 大輔  

南カリフォルニア大学 MBA/製品開発工学部大学院 (JETROロサンゼルス リサーチ・アシスタント)

  最近至る所で「環境に優しい」や「グリーン」といったエコトレンドを生かしたプロダクト開発が進んでいる。自動車業界では、各社競ってハイブリッドカー市場への参入や次世代エネルギー開発へ投資を実施している。そんな「エコブーム」は、ここLA発祥のビーチカルチャーの代表でもあるサーフィン業界にも大きく影響している。長年サーフボードのプライマリサプライヤとして、サーフィン業界をサポートし続けてきたClark Form社が、2005年12月に自らの決意で突然そのドアを閉じた。当社は停止の真相を明らかにしていないが、EPA(米国環境省)の環境安全基準に見合わない器具や薬品を使用していた事が主要な原因と言われている。独占に近い状態だった世界最大のサーフボードブランク工場が一日にして停止したことを受け、業界ではこれを機に、サーフボード開発にも、「環境」という新たな要件が追加された。それから2年がたった現在のサーフィン業界では、新素材、そして新しい構造のサーフボード開発がより一層盛んになってきている。

そうしたエコサーフィンがブームとなってきた中、南カリフォルニア大学では、ここLos Angelesでサーフィン業界の未来系を想像したユニークなコンセプトのサーフボード開発を、学校のプログラムとサーフィン業界の協力にて行っている。サステイナブル・サーフボードは、深刻なプラスティックのリサイクル問題に一石を投じる可能性を秘めていると同時に、今までのサーフボードとは一目見た瞬間から違いがわかる画期的なデザインとなっている。今回から環境という点に着目しつつ、1)サーフィン業界の現状と最新の技術トレンド 、2)サーフィンを題材にした大学と企業の連携プロジェクト、そして、 3)リサイクル可能なサーフボード開発という新しい取り組みについて3回の連載を行っていきたい。

まずは、サーフボードの歴史から簡単におさらいしておこう。戦前では、木をつかって作られた非常に重く長いサーフボードが主流だったが、新素材の開発が進み、戦後からClark Foamが終焉を迎えるまでの近年は、ポリウレタンやポリスティレンといったポリマーを、グラスファイバーと樹皮でコーティングして強度を出す、という製法にとって代わった。ポリマーの出現により、サーフボードをより短く、そして軽くすることが可能となり、波の上でのパフォーマンスが一気に広がったのである。

しかし、ポリウレタンとグラスファイバーで作られたボードは、軽さを追求したかわりに、耐久性で欠点があり、大きめの波でボードが砂浜に叩き付けられたり、リーフ(岩部分)にあたるだけで簡単に割れてしまうことも少なくなかった。そして、何よりもボードを構成する物質がポリマーのため、一度壊れてしまうと再利用するのは非常に難しいという難点もあった。このサーフボードが50年近く主流であった理由は、大量生産されたブランク(サーフボードの中心部分)が比較的安価で入手できたからではないか。2005年のClark Foam社の業務停止によりこの素材が入手困難になった現在では、サーフボード の小売り価格が 1.5〜2倍程度(ショートボードで$600〜)に上がり、サーファーにとって壊れやすく高いボードとして徐々に人気を落としていった。これが今まで注目されていなかった素材や構造がここ数年で一気に台頭してきた一因であることは言うまでもない。

またアメリカの消費者の間では、空前のオイル高騰と自然志向(LohasやOrganic)ブームが重なり、「ハイブリッド」や「グリーン」といった環境配慮のマインドが根付き始めている。これは、サーフィン業界にとっても、次世代のサーフボード開発のインセンティブとなっている。業界が実施した2006年のU.S.サーフィン人口調査では、270万人がサーフィンを経験し、うち70万人は頻繁にサーフィンに参加していると言われており、増加傾向にある。また、近年のサーフィン映画や、X-Gameなどの女性からの人気も支持し、女性のサーフィンへの参加率も今やサーフィン人口全体の40%が女性サーファーとなっている。さらに若年層の参加率が増えていること、経験者が高学歴/高収入になってきていることなどが主なトレンドとして上げられ、今までのようなビーチに住む特定のファン中心というものから、一般大衆が気軽に楽しめる活動になってきている。

そのような中、最近良く目にするようになった表面が今までのボードと違いプラスチックのような手触りのサーフボードを取り上げてみよう。一つは、Surftech社(http://www.surftech.com/tech.phtml)が提供するTUFLITEという複数のレイヤーを使ってサーフボードをコーティングする技術である。以前のファイバーグラスコートのボードに比べ、 軽く耐久性に優れている。また、黒い表面に繊維状の模様が見える、AVISO社(http://www.avisosurf.com/)のカーボンファイバーボードも最近では良く店頭に並べられている。カーボン特有の軽量かつ強度があるという特徴を生かし、サーフボードの中心が空洞になっている構造を採用している。耐久性を追求することで、サーフボードの廃材自体を減らし、地球環境に及ぼす影響を少なくできるものである。

地球環境への配慮に関するもう一つの取り組みとして、環境への影響が少ない素材を使ってサーフボードを作るという動きである。Greenlight Surfboard Supply社 (http://greenlightsurfsupply.com/about.html) では、サステイナブルなサーフボードを作る材料を提供している。具体的には、ファイバーグラスの代わりに竹の繊維を使ったり、バイオプラスティックを利用したリサイクル可能なfoamを中心部分に使うなどして、サーフボードの寿命を迎えた時にも環境への影響を減らすというものである。また、Grain Surfboards社(http://www.grainsurfboards.com/)では、50年代頃まで主流であった木のサーフボードを、新しい製法(中空ボード:組み立て方式)で提供し、木製でありながら軽量で耐久性のあるサーフボードを送り出している。そして、全世界のデイリーサーファーが波情報をチェックするポータルサイト(http://www.wetSand.com)では、The Green Room というメニューを大きく取り上げ、サステイナブルなサーフィン・ライフスタイルから、最新のエコ技術まで幅広くカバーしている。

このようにここ数年の間でサーフィン業界の間にも、「エコブーム」が強く浸透している。しかしながら、これらの取り組みが主流になるには、何よりも消費者であるサーファー たちの意識が向上していく必要がある。サーファーの中にはまだまだ環境や、安全性といった言葉よりも、かっこよさ、パフォーマンスという言葉の方が優先されているということもしっかり見つめていかければならない。そして、これから市場に出てくると見られる新技術を応用したサーフボード作りに多いに期待したい。
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