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UC Irvine Department of Chemistry 星野 友

人工抗体の開発と事業化を目指した試み

抗体とは人間の体内にウィルスや菌、毒素などの異物が進入した際、それを認識し結合することによって中和するという機能を持った免疫機能の要を担うタンパク質である。抗体は100年前にベーリング博士と北里博士が存在を発見して以来、血清療法や病気の診断のために広く応用されてきた。近年では高純度のモノクローナル抗体作成の技術が急速に進歩し、抗体を使った抗ガン剤等の医薬品は製薬業界の一大市場を形成 している。






この様な有用な抗体であるが、タンパク質という材料でできているため、酸やアルカリ、熱といった環境では壊れてしまったり、腐りやすいため長期の保存が難しかったり、生物に生産させるため非常に高価である等の弱点が存在した。

我々、UCアーバイン化学科のKenneth J. Sheaのグループは合成化学の手法を用いて抗体と同様の機能を持ち、抗体より安価で安定なプラスチック抗体の合成方法を開発した。本成果は合成化学と生命科 学の境界を狭めるという意味で科学的に非常に興味深いだけでなく、新規の抗体市場を生み出す可能性がある。例えば、これまで抗体の利用が困難であった胃腸内での食中毒菌の毒素の中和やタンパク質の精製のための材料として応用可能である。我々は、大学での研究を進めると共に、UCアーバインの充実した産学連携のシステムを利用して、ビジネスプラン・コンテスト等に参加し、産業界からの情報を積極的に取り入れることで基礎研究と社会還元両方の加速を計っている。

UCアーバインのあるカリフォルニア州アーバイン市はハイテク企業、研究所を擁する新しい都市である。市内には緑が豊富にあり、清潔で、治安も良く、生活環境が優れているため世界から優秀な研究者を集め、日本からも多くの企業が進出している。UCアーバインは1965年に設立された比較的新しい総合大学である。我々の在籍する化学科のあるShool of Physical Scienceは1995年にノーベル物をダブル受賞した Frederick Reinesと Frank Sherwood Rowlandが教授として在籍し、現在でも大気化学、有機合成化学の分野では全米で5本の指に入ると言われている。UCアーバインでは大学発の技術の事業化を推進するために、学内の技術移転組織であるOTA(Office of Technology Alliance)やビジネススクールそれに地域のイノベーション推進のための学外ネットワークであるOCTANe等が個人ベースでネットワークを築き密に連携している。また、アーバインは地理的にロサンゼルス、サンディエゴを有する南カリフォルニア地区の真ん中に位置するため、南カリフォルニアの人材が交流する際の中継地にもなっている。実際に日本人の研究者交流会であるSCSNが定期的に開催されている。この様な研究者同士の交流から分野を超えた共同研究も多くスタートしている。

この様な恵まれた環境の中で、積極的にコミュニケーションを行いながら研究開発を進めることで人工抗体の実用化に向けたさらなる研究を加速していきたい。今後より多くの日本人が南カリフォルニアに訪れ、日本人同士のネットワークを強固にすることでアメリカにおける日本人のプレゼンスが高まっていけばさらに幸いである。 (本テーマは、3月8日にSCSN技術フォーラム(UCLA)で講演会が開催された)



 

星野 友, Ph.D.
Postdoctoral Fellow
Department of Chemistry
University of California, Irvine

神奈川県出身。2006年東京工業大学生命理工学研究科博士課程卒業、Ph.D.。日 本学術振興会特別研究員を経て、現在、カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)でポ スドク。専門は高分子・界面化学、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーなど
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