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未来を担うイノベーターの視線 プリント メール
Konami Digital Entertainment Inc. Producer 木本 旬

最先端技術とTVゲーム

本格的なコンピューターゲームの歴史は1983年の任天堂・ファミリーコンピューター(通称ファミコン)から始まる。それまでのコンピューターゲームはインベーダーに代表されるように、画面が移動せずその場での動きを楽しむものだったが、ファミコンで初めてスーパーマリオブラザーズ(1985年)のような「横方向の動きが物語を展開していくスタイル」が登場した。




またロールプレイングスタイルを導入したドラゴンクエスト(1986年)は爆発的な人気を博し、任天堂ファミコンは全世界で6200万台以上の売り上げを誇るメガヒット商品となった。1990年に登場したスーパーファミコンでは大量生産と豊富な資金力・技術力によるコストダウンで、他社の追随を許さない高性能な製品開発を可能とした。1994年登場のSONYプレイステーションでは演算能力・CPUパワー・画像能力すべてが高性能化、これまでの2次元平面的な動きに代わり、初めて3次元立体表現を取り入れたレーシングゲーム、格闘ゲームが登場した。その背景には建築土木関係の三次元CAD設計エンジニアなどの流入が見られた。2000年に登場したSONYプレイステーション2は、同社の潤沢な資金と技術力を駆使して更に高性能化、もはやその演算能力は弾道ミサイルを制御できるレベルにまで達したため、玩具として初めて、共産圏への輸出を規制したCOCOMに抵触することになった(一時期秋葉原には怪しげな極東アジア人が増えたらしい?)。2005年 にはMicrosoft Xbox 360がハイビジョン映像に正式対応した始めてのゲーム機として登場、その画像の美しさ(高解像度映像)が通常のテレビコマーシャルで表現できないのが難点となった(1670万台売り上げ)。Xbox 360対抗馬としてSONYは2006年にプレステ3(960万台売り上げ)を、任天堂は2007年にWii(ウィー:2000万台売り上げ)を投入し、ゲーム業界は戦国時代のような熾烈なシェア争いを展開するに至っている。

また、ゲーム制作自体の規模も年々大きくなってきており、制作費、総スタッフ数、制作期間度はハリウッド映画の規模に並ぶものとなっている。ヒット作の制作にはアイデア、シナリオ、優秀なスタッフといろいろな条件をクリアーする必要があるためエンターテインメント関係の情報が集中するロサンゼルスを基点とする制作体制が重要となってきている。このためLA周辺に本社や事務所を置くゲーム関係の会社が増えている。

 映像を利用する数々のゲームの中で、特にレーシングゲームに関してはその画質やリアリティは本物と変わらないほどに発展している。コンピュータパワーの圧倒的な進歩は、単純な二次元平面内での動きに代わる、非常に高解像度で滑らかな三次元的な動きを実現、また音質もかつての単純な電子音からフルオーケストラレベルの音質に進化した。ここで画像のリアリティを定義するときに、ゲーム業界では業務用のヴァーチャルリアリティ(たとえば航空機やスペースシャトルのフライトシミュレータ)とその表現のコンセプトが異なることが興味深い。つまり、ゲームでは例えば「戦車のバンパーのかすかな凹み」や「実際にはささいな煙」をあえて誇張することでリアリティーを膨らませる(湾岸戦争の実写ではこのような“誇張”が無いために、かえって視聴者はゲームで感じるほどのリアリティーを感じなかったのは興味深い)。スポーツゲームに関しては、例えばゴルフゲームではボールの大きさやスピードを実際とわざと変えることでリアリティーを増しているし、野球ゲームではピッチャーとバッターの距離をTV中継とは違う角度で演出したり、ボールのスピードをかなり遅めに表現することで感覚的なリアリティを増すとともにゲームの魅力を引き出している(実際の距離、球速をそのまま表現すると、それに対応できるイチロー並みの動体視力を持たないほとんどのプレーヤーにとっては非常につまらないゲームになってしまう)。つまり単に実物に忠実なCG映像を開発するのがリアルなわけではないという点が注目される。

<TVゲームに関する5つの豆知識>

豆知識1:ゲームCGと実際に撮影した映像の見分け方
レーシングゲームの映像ではプレーヤー以外の車は走行中にブレーキをかけてテールランプがつくようにはデザインされておらず、そこで実際の映像と見分けることが出来る。またサッカーゲームではCG選手は実際の人間のように“躊躇する”というような“一瞬の間”がないのでそのフィーリングで見分けることが出来る。

豆知識2:国による嗜好の違い
「テトリス」、「スーパーマリオブラザース」などの単純なゲームは言葉・国境を越えて世界的に受け入れられるが、「ときめきメモリアル(恋愛系)」、「ドラゴンクエスト(冒険物)」などは地域が限定されてくる。スポーツゲームに関しては欧州ではサッカーゲームが、日本では野球ゲームが、米国ではアメフトゲームがはやる傾向がある。また遊び方としては、日本では個室で一人で遊ぶことが多いのに対して、アメリカでは大部屋でみんなでわいわいやることが多い。

豆知識3:社会への影響
特に残虐な戦闘ゲームや格闘ゲームは子供の健全な成長への悪影響が懸念されるが、各国にはゲームの内容を取り締まる規則があり、ゲームに年齢制限を課す場合もある。また社会現象までになった「ドラゴンクエスト」は平日に販売すると子供が学校をサボってしまうので休日にしか売ってはいけない、という行政指導が入るに至った。

豆知識4:ゲーム開発費とそのビジネスモデル
超大作といわれるゲーム開発には数百人程度のエンジニアが2,3年掛かりでおよそ40~50億円かかる。その回収はソフト一本1000円×1000万人=100億円というような薄利多売により達成される。ゲームソフトによっては発売数日で100億円ほどの売り上げがあり、開発費を一気に回収してしまう。

豆知識5:ゲーム制作の今後の方向性
今後の技術的な方向性としては、カメラによってコンピューターがプレイヤーの表情を読み取り更に柔軟な相互コミュニケーションを達成する技術、語り手の感情を含めて認識できる音声認識技術、ヘルメットのようにかぶって高解像度映像や音質を楽しむヘッドマウントディスプレー技術、3Dホログラムを使用した本当にリアルな三次元映像表現技術(実際の物のように、視点を変えると別の面が見える)などのさらなる発展が期待される。

(本テーマは、3月8日にSCSN技術フォーラム(UCLA)で講演会が開催された)



 

木本 旬
ゲームプロデューサー
Konami Digital Entertainment, Inc.

大阪出身。1982年ハドソン大阪(現、株式会社ハドソン)入社、パーソナルコン ピューター用のゲームソフトの制作、販売を担当。ハドソンの任天堂ファミリーコ ンピューター市場への参入に合わせてゲーム企画、ディレクションに参加。1989年 ハドソンUSA(SF)にて北米向けタイトル担当、その後、PCエンジン、スーパーファ ミコンなどのライセンス物タイトルを主に担当。1998年に株式会社コナミコン ピュータエンタテインメント札幌に移動、制作副部長、取締役副社長としてゲーム プロデュースを担当。その後ハドソンがコナミグループとなったためハドソンとコ ナミの間で複数のゲーム制作を担当。

主な制作タイトル
海外版バスケットボールタイトル(SFC)、イース、英雄伝説(PCエンジン)、天外 魔境ゼロ(SFC)、天外魔境Ⅲ(PS2)、サバイバルキッズシリーズ(GBおよびDS)、そ の他多数
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