| Caltech/MIT企業家フォーラム報告 |
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JETROロサンゼルス ステファン・ヴォス 第5回 私たちのロボットの未来
ロボットは、工場での労働力から部屋の掃除に至るまで、現代社会の様々な環境において既に活躍している。また、宇宙開発や軍事などの分野でも重要な役割を果たしてる。航空・宇宙産業、防衛産業に関連する技術で強みを有する南カリフォルにアでは、今後の更なる技術革新を通じて人々の日常生活に役立つロボットが開発されていくと期待される。
運転の自動化 Caltech/MIT Enterprise Forumの月例セミナーは、今回2月9日(土)に「ロボット開発における企業家の展望」をテーマとして開催した。ロボット工学が大きな役割を担う成長分野や企業家の事業機会などに焦点を当てるもので、80人余が参加した。まず最初に、Aerospace Corporation社の Thomas Paige氏によりロボット工学が輸送機関にもたらす手段について基調演説が行われ、次にフォルクスワーゲン社勤務の経歴もあるMohr-Davidow Ventures社のSeven Strohbend氏、NASAの助成により南カリフォルニア大学で自己制御型ロボットの開発に取組むWei-Min Shen氏、腹腔鏡手術で使われるロボットを開発したInterface Surgical Technology社のMoji Ghodoussi氏を迎えてパネル討議を行った。 Paige氏とStrohbend氏のプレゼンテーションは、ともに輸送部門(特に自動車やそれに似た機械の自動化)に注目した。Aerospace Corporation社の事業担当取締役であるPaige氏は、同社が取組んでいる輸送機関の代替システムの研究の概要を紹介した。同氏によると、都市における交通手段は資金調達メカニズムに大きく左右されており、米国では1950年代にガソリン税を原資とする連邦政府資金により幹線道路網の建設が支援され、これを受けて自動車の使用率が急上昇した。70年代からは自治体が路面電車やバスなど様々な公共交通システムに資金を供給したが、自動車の利用はなお突出しており、住宅の郊外化により自動車の役割は拡大している。米国の輸送機関の中で現在僅か2%が公共交通機関によるものに過ぎない。ヨーロッパでは8%程度を公共交通機関が占めているが、同様に住宅の郊外化により、その数字は減少している。自動車への過剰な依存は、交通機関の過密化をもたらし、深刻な経済問題をも引き起こしかねないと懸念されている。 ロサンゼルスのように既に開発が進んでいる都市環境で交通機関の代替システムを導入する際には、コスト面と既存のインフラの存在により選択肢が大幅に限られる。完全な再開発を行うには周辺地域全体の土地を整理する必要があるため、導入される技術は追加的なものに限定される。こうした中で、車間距離を自動的に調整し、渋滞を解消させる自動車のロボット化は、道路の過密化の問題解決に貢献する。また、道路のオートメーション化の際には、既設の車道や幹線道路が活用され、新しい道路の敷設により周辺地域に建つ住宅などが立ち退かなければならないことのないように進められる。なお、個人の交通手段の場合にはあらかじめ起点と終点を明確にして自動運転を行うことができるため、通勤中に運転以外のことに集中できるというメリットももたらされる。 Aerospace Corporation社が検討しているシステムは「Personal Rapid Transit (PRT) 」と呼ばれ、自動車と公共交通機関の特徴を融合させたものである。PRTシステムでは、既設の車道にオートメーション化された小型の専用車両と軌道が設置される。自動車による個人通勤者が大量の鉄の空間に囲まれている現状において、小型車の通勤では一層少ない鉄に囲まれることとなり、都市環境に適しているとの考えを踏まえているる。同システムの導入により、数多くの通勤・通学者を輸送できることとなり、エネルギー消費の削減につながる。さらに、今後は専用車両の外部からも運転できるようになり、貨物その他の輸送でも活用が見込まれる。同社によれば、250~500億ドルの費用でシステムを設置できるため、これは過密化問題を解決するための他の選択肢よりも少ないコストとなる。同システムの問題点の一つは専用車両用の軌道を設置する際に視覚的な影響をもたらすことであるが、これも設計次第で対応が可能であると述べられた。むしろ最大の難問は連邦政府の資金的支援を得られるか否かという点である。同様のシステムは現在スウェーデンのVectus社とアブ・ダビの Masdar社によってイギリスのヒースロー空港で構築されている。 Strohbend氏は輸送機関のロボット化について自動車製造事業者と消費者の両方の立場から語った。同氏は2005年と2007年に国防総省国防高等研究事業局(DARPA)が主催する無人自動車製造コンペティションの決勝ラウンドにフォルクスワーゲン社とスタンフォード社の共同事業で参加しており、自動車のオートメーション化への挑戦に精通している(2007年には優勝を決めている)。Strohbend氏は技術面に加えて法制面の課題から短期的に自動車の完全オートメーション化は実現することは難しいと考えている。例えば、仮にオートメーション化された車が事故に遭った場合、誰が責任をとるのか。運転者なのか、当該車の製造業者の責任とされるべきかが論点となるからだ。また、当該システムの機能を車道のインフラに頼る場合、政府が当該インフラを配置をするためには何十年も要することとなると考えられる。 Strohbend氏がフォルクスワーゲン社に勤務していた際には、同社は自動車に導入する技術として運転者にすぐに役立つものを追求していた。このためには商品化に近く信頼性の高い技術を採用することが鍵であった。また、同社は、ロボットに運転を完全に任せるのではなく自らが一定の運転を行うべきという消費者側の意向と企業側の責任問題の回避の観点から、サイドアシスト(自動運転補助)や緊急ブレーキ機能などの技術の開発に注力した。自動車はロボット化システム市場の大きな可能性を含んでいるが、この分野への参入を想定する企業家は、こうした全ての要素を念頭に入れていかなければならない。 同氏の論点は、自動車のオートメーション化のために開発された技術は地図の作成、経路の検索や先進的なセンサーなど多くの分野でも活用が見込まれるということだ。ロボットは、必ずしも離れた距離を自主的に移動する装置である必要は無く、ソフトウェアやその他の特殊な機能を持つことが期待されている。 宇宙へ拡がるロボットの活躍 次に、Shen氏が取締役を務める南カリフォルニア大学のPolymarphic Robotic Labでの研究内容について議論が行われた。Shen氏のロボットは個々の部品ユニットが接続されるモジュールから構成されており、位置環境の変化に対応できるように設計されている。例えば、ロボットが丘の上に置かれた場合、自らの型を車輪の姿に変更して斜面を下ったり、丘の下に置かれた場合には自ら足を形成して登り上がることが可能である。このロボットの持つ構造の形は無限である。 このことはロボット製造における根本的な変化を意味する。現在のロボットはいずれも特定の目的のために設計されている。例えば、宇宙空間でのミッションにおいては、ロボットアームや探査機の使用など、様々なロボットが個々の目的に応じて活用されている。このため、ミッションが複雑になるにつれ、数多くのロボットが必要とされ、全てを搬送するのにコストが嵩んでしまう。Shen氏が取組む研究は、1つのロボットが型を再設定化することにより求められる各々の機能に適応することが可能な「スーパー・ロボット」の製作である。 個々のモジュールへの信号は、紫外線、無線通信、圧力センサーによって伝達され、必要に応じて付加的なセンサーを追加することもできる。頭脳部分は固定的にシステムに搭載されるのではなく、いずれのモジュールも先導モジュールとして機能することが可能である。また、モジュールは自らの形の変化を認識し、飛行中でも調整することが可能である。仮に外部の敵からモジュールを破壊されたり、一部を破損した場合でも調整できるよう設計されており、人間が行うには危険度の高い任務や難しい任務への適用が最適である。 大学でのShen氏の役割は、製品の商品化プロセスの第一歩を踏み出すことと考えている。同氏のロボットは未だ商品化には程遠い段階ではあるが、他のロボットが市場に出てくることを期待している。こうしたロボットは公衆の安全から玩具まで幅広い用途がある。どのような利用方法を思いつくかは企業家次第である。 医療への貢献 Ghodoussi氏は腹腔鏡手術の際に使われるロボット内視鏡を製作したComputer Motion社の設立と販売に携わっている。会社を設立した際には、1993年から1995年にかけて1000ユニットの販売を見込んでいた。実際には600ユニットを販売するのに10年を要し、これは販売見通しを慎重に行う必要性を深く学ぶ教訓となった。これほどの長期間を要した理由は医療規制の課題と外科医が手術手順の変更を嫌うという問題であった。食品医薬局(FDA)と外科医の双方に対して同製品の理解を得るのに長期間を要したのである。 1996年から97年には資金調達に優れた競合企業が登場し、同企業の技術面での侵害は訴訟にまで至った。この間にComputer Motion社は2001年に世界初のテレビ手術の設備を作り出した。その後、この二社は2004年に合併するに至り、DaVinciという新製品とともにビジネスの拡大に成功している。 今日、医療分野で用いられているロボットは簡易なもので高い知能は持たないが、有用なものとなっている。Ghodoussi氏は同分野にはロボット工学が寄与する余地があり、多くの機会や課題で溢れていると考える。しかしながら、同氏は最初に一番(先駆者)になるべきではなかったと今にして感じている。それは販売ルートやFDAの教育という重い負担があったからであり、このコストを避けるためには他の誰かが市場を開拓した後に付いた方が簡単なのだ。 ロボット・ベンチャーへの投資 質疑応答においては、ロボット工学への投資やいずれの市場が注目されるかに議論が集中した。Strohben氏は自らのベンチャーキャピタル(VC)が最初になることを望んでいる一方、すでに簡易な製品で確立した市場で可能な限りリスクを排除するということが理想的だと述べた。仮に複雑な製品から展開していく場合には、市場で実際に販売するに至るまでの時間を要し、何らかの誤解や誤算が生ずるリスクがある。したがって、初期段階では簡易な製品から開始することが好まれ、その後に消費者のニーズに対応した特性を追加していくのが適切だとした。Ghodoussi氏も簡易な製品からスタートすることが賢明であると同意した。通常VCは市場参入に長期間を要する製品に対する投資は行わない。Strohbend氏は、インターネット関連や太陽電池など様々な製品毎に市場化までのタイムスパンが異なることをVCが十分に把握し、それに応じて投資を割当てていると指摘した。また、投資効果をもたらすまでの時間は問題にはなるが、潜在市場の大きさの方がより大きな決定要因となる。また、VC自らがある企業に投資しないといった場合でも、その企業に対して他の資金調達方法を紹介することもある。これはエンジェル投資家がVCにベンチャー企業を紹介するのと同じである。VCの他にもベンチャー企業が考慮すべき資金調達の手段がある。Ghodoussi氏は、自身の会社が上場前にエンジェル投資家とともに取り組んできたと付け加えた。 |
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