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Focus the Nation:全米一斉に環境意識を高めた日 プリント メール
JETRO Los Angeles, 岡本奈緒子(研究アシスタント)、佐藤友香(研究アシスタント)


2008年1月31日、温暖化対策を考えるシンポジアム「Focus the Nation」が全米の1800以上の機関において同時進行で行われた。大学、研究所、高校等の教育分野が多く参加し、温暖化対策の重要課題の一つである「教育」と「総合的アプローチ」を象徴するイベントとなった。 1月31日は米大統領予備選挙の開始日ということもあり、州や地方自治体からの政策立案者も招かれ、党派に関係ない団結力ある取組みにも一歩近づいた。全米において「環境問題」という一つのテーマの下で方向性の相違を克服していこうという試みであり、環境活動家もそうでない者も、これから社会で活躍する学生達の問題意識を高める機会となった。

南カリフォルニアではUCLA校が会場の一つとなり、ロサンゼルス政府機関や大学長、教授陣そして大学生の多くが終日参加した。日中、大学の中心であるAckerman Unionの前ではUCLA Institute of the Environment、LA Zero Wasteなど約30の環境関連の展示ブースが設置され、環境問題への意識向上がアピールされた。

屋外では展示ブース、屋内では基調講演やワークショップという形式でイベントは進められた。開会演説はUCLA学長Gene Block氏、UCLAにおけるFocus the Nationのまとめ役であるUCLA学生のKim Sanders女史とMarissa Levi女史、そしてUCLA Institute of the EnvironmentのTom Smith氏により行われた。基調演説ではカリフォルニア大気資源委員会のMarch Nichols女史、UCLA大学副総長のJack Powazek氏、州議会議員のGrace Napolitano女史、そしてTreePeopleのAndy Lipkis氏によりUCLAや周辺地域における取組みが紹介された。

3万5千人以上の生徒が日々勉強し、4万人以上の職員が働く大規模な施設であるため、UCLAの環境対策が生み出す環境へのインパクトは大きい。学長であるBlock氏自身も、生物学者として環境対策を大学全体の取り組み課題と位置付けて奨励している。UCLAでの環境問題への取り組みは交通分野の改革とエネルギー消費の節約の2つが代表的である。交通面では生徒の移動効率を向上し、車社会であるロサンゼルスにおける特有の政策を導入した。ロサンゼルス郡において85箇所へ11人乗りの大型車が生徒の送り迎えを行うVanPoolシステムや、カープール通学を促進するRide Shareプログラムによって、生徒一人当たり車一台(Drive-Alone)という低効率な通学手段が改善された。1990年には全体の69%の生徒がDrive-Aloneであったが、17年後の2007年には55%まで減ったという。2つ目に、UCLAの温暖化ガス排出率の85%を占めるエネルギー消費の削減が挙げられる。現在、①研究機材の改良 ② 建物内への運動センサーの導入 ③エアコンシステムの改良といった3つのプロジェクトがあり、前二者は進行中、そして後者は近々導入予定である。建築物のグリーン化も進めており、エネルギー効率の改善を目指しているという。教室を使わない夏や冬休みの間は徹底的に消費を削減した。最初は戸惑いを見せた研究者もいたが、5年後には当たり前のことになった。「正しいポリシーは人間の生活態度をも変える」とPowazek氏は語った。

続くワークショップはUCLA教授が中心となり行われ、Focus the Nationの目的の一つである環境問題への総合的アプローチを象徴するものであった。ワークショップの内容もScience of Global Warming(温暖化の科学的要素)、Economy of Global Warming(温暖化がもたらす経済)、Politics and Policy of Global Warming(温暖化を巡る政治)、Environmental Justice & Community Solutions (環境問題に関する正義とコミュニティーにおける解決法)といった多くの分野でテーマが設けられた。UCLAは大規模な研究大学のため、様々な分野の専門家がいるため、学生が自分のホームグラウンドである大学で日々親しみのある教授とともに環境問題を学んだり、建設的な意見交換を行うことで効果的なワークショップとなった。ワークショップによっては政治職員や市の代表の参加もあり、教授や生徒の意見が政策立案者に届いているという確信も得ることができた。各ワークショップの詳細はHPを参照していただきたい。最後に一日の締めくくりとして、レオナルド・デカプリオ監督の環境映画「11th Hour」のスクリーニングとディスカッションが行われた。

産業発展は経済的な富を生んだのは確かだが、これからの世代を生きる人には環境異変という問題が残された。同イベントはその事実を受け止めた大人達が、若い世代にできることの一つとして世代を超えた対談の場を設けたものとも言える。大統領予備選挙の行く先は今だ分からず、米国では環境問題よりも経済情勢の安定が重視される今、所属にとらわれず国民一人・人間一人として環境意識を上げていく重要性が求められる。UCLAで象徴的であったのは、分野が異なる専門家が学問の壁を越えてお互いの環境に対する知識を高めていこうとする意欲が見受けられたことだ。今回、全米の1800機関が同じように環境問題に取り組み何かを変えていこうという意欲がFocus the Nationを通して感じ取れた。米国では少なくとも1800のグループが、環境問題に「フォーカス」し、総合的な取組みを行う大きな一歩を歩み始めたのである。
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